すぐ死ぬんだから

 夏のドラマが終わった。BSプレミアム、内館牧子脚本『すぐ死ぬんだから』を感慨深く母と一緒に観た。79歳、三田佳子演じるハナ夫婦は仲も良かったが、夫の死後、愛人と隠し子がいることを知る。なんか・・・面白そう。内館ドラマの特徴、登場人物は角が取れず、ドロドロ系の愛憎劇なのだが、最後には其々が全てを忘れたごとくからっと前を向いて生きて行く。
 今回もハナは何とか愛人を負かしてやろうと考える。孫から死後離婚というのがあることを聞き、愛人に告げる。
「私に酷な仕打ちをする男の墓に入るなんて胸糞悪いんです。真面な人間ならもっと早くに身を引くと思いますが、40年も図々しく居座って、私の人生台無しにしたんだから、貴女、夫と一緒の墓に入って念願かなって添いとげなさいな」
 しかし、ひょんなことから隠し子の息子が海外で仕事をしたくなり、母一人にすることになるので、正妻のハナに母のことを何かあれば、頼むとお願いに行き、話は好転していく。人間の心理をよく衝いている。どんなに憎い相手にも頼まれれば、悪い気がしないのが人の情けだ。
 愛人がハナを訪ねてくる「息子はハナさんの温かさを感じたんだと思います。ハナさんが奥様でよかった」「あんたずるくって計算高くって、覚悟があって堂々としていて、かわいいのよ、くやしいけど」
 老舗の酒屋を営むハナと夫だったが、今は息子が継いでいる。酒屋のリニューアルでハナが立ち飲み屋はどうか?と提案し、ホステスをハナが務めることになる。「実年齢なんか忘れ、人生の冬をせめて秋と思って過ごしてみようと思う。いつ人生の終わりがくるなんてわからない。だったら私らしくこの人生を思いっきり駆け抜けてやろうと思う。どうせすぐ死ぬんだから。」
 内館作品が昔から好きだ。代表作は「想い出に変わるまで」いつもOLがヒロインだ。人生の苦難やままならないことに、どんなに落ち込んで憎悪に狂おうとも時が経てば、軽やかに美しく前を向いて歩き出す、強かな女性がテーマである。女性はそうでなくてはならない。秋の風を感じ、前を向いて歩いて行こうと思った。

この記事へのコメント